単純立方構造で配列したルビジウムクラスターで新しい強磁性を発見

 ゼオライトAの細孔中の単純立方構造で配列したカリウムクラスターでは,クラスター当たりのs電子数 n が2個を越えると突然強磁性が観測される。この強磁性は,反強磁性配列したクラスターの磁気モーメントが,クラスターの 1p 軌道の縮退効果によって飛躍的に大きくなったDzyaloshinsky-守谷(DM)相互作用によって,反平行のスピンが傾いたためと解釈されている。同様にルビジウムクラスターをゼオライトA中に作成したところ,n が2個を越えて 1p 準位をs電子が占有しても強磁性は起こらないが,約4個以上で強磁性が観測されることが分かった(図1)。このことから,カリウムクラスターの上記の機構とは異なる強磁性であることが考えられる。なお,この強磁性は,アロットプロット解析により,間違いなく強磁性転移によるものであることが確認された(図2)。

図1 単純立方構造で配列したルビジウムクラスターの磁化の温度依存性。n はクラスター当たりのs電子数 図2 単純立方構造で配列したルビジウムクラスターの n = 5.0 の試料のアロットプロット。3K以下で自発磁化が発生し,強磁性転移が起きていることがわかる。 図3 単純立方構造で配列したカリウム,ルビジウム,セシウムクラスターの赤外吸収スペクトル。カリウムクラスターはモット絶縁体,他は金属状態にあることがわかる。

 さらに,中赤外域までの吸収スペクトルを測定したところ,カリウムクラスターではモット絶縁体による明確な吸収端が観測されたが,ルビジウムクラスターでは,吸収端はより低エネルギー域まで延びていてドルーデ項による吸収が観測されており,金属状態に転移している可能性が高いことが分かった(図3)。これらの点から,ルビジウムクラスターで観測された強磁性はカリウムクラスターとは基本的に異なる新たな機構によるものであると考えられる。現在,ゼオライトAのαケージとβケージに非等価な磁気副格子が形成されるモデルを検討している。なお,セシウムクラスターでは,さらに強い赤外吸収が観測される。

参考文献
[1] Evidence for Ferromagnetism in Rubidium Clusters Incorporated into Zeolite A, T. C. Duan, T. Nakano and Y. Nozue, to be published in J. Mag. Mag. Mat.[PDF]
[2] Magnetic and Optical Properties of Rb and Cs Clusters Incorporated into Zeolite A, T.C. Duan, T. Nakano and Y. Nozue, e-J. Surf. Sci. Nanotech. 5 (2007) 6-11.[PDF]